ロンドン時間の朝6時、BBCワールドサービスの日本語デスクでは、前夜に発生した重大ニュースの翻訳作業が始まっています。翻訳者のエミコは、英語で書かれた800語の記事をチェックします。
2023年に導入されたAI翻訳システムは、記事が英語で公開されると同時に40言語への初稿を自動生成します。以前は各言語デスクが順番に翻訳していたため、日本語版の公開まで3時間かかっていました。現在は30分です。
文化的ニュアンスの調整
午前8時、エミコはAIが生成した日本語訳を確認します。文法的には正確ですが、文化的な文脈が欠けている箇所が複数あります。英国の政治用語をそのまま訳しても日本の読者には伝わりません。
たとえば、backbencherという単語はAIによって後列議員と訳されましたが、日本の読者にはその政治的意味が理解されません。エミコは一般議員または平議員に修正し、簡潔な説明を追加しました。
速報対応と品質管理
午前10時、突発的な事件が発生し、速報記事が英語で公開されました。AIは即座に翻訳を生成しますが、エミコは公開前に必ず内容を確認します。固有名詞の表記、数字の単位、時刻の表示などをチェックし、5分以内に日本語版を公開しました。
午後は、より長い分析記事の翻訳に取り組みます。AIの下訳があることで、翻訳者は文章の流れや論理構成の最適化に集中できるようになりました。結果として、一日に処理できる記事数は以前の1.8倍に増加しています。

